[活動紹介] 事例紹介

第十三回「日中韓文化交流フォーラム」
<実施期間:2017年11月1日(水)~4日(土)>

  • 1. 全体会議
    2017年11月2日(水)
  • 2. 会場
    韓国・江陵市 江陵シーマークホテル
  • 3. テーマ
    「韓中日オリンピックと東アジアの文化芸術交流」
  • 4. 出席者
    [日本]
    委員長 兼 専門家 :宮廻 正明
     (文化財保護・芸術研究助成財団理事長、東京藝術
     大学教授)
    委 員 :澤 和樹
     (東京藝術大学学長)
    :小宮 浩
     (文化財保護・芸術研究助成財団専務理事)
    事務局 :丸山 純一
     (文化財保護・芸術研究助成財団事務局長)
    :村木 茂
     (文化財保護・芸術研究助成財団事務局次長)
    芸術家
    (日本画家)
    :鷹濱 春奈
     (東京藝術大学社会連携センター)
    :松原 亜実
     (       〃      )
    [韓国]
    委員長 :鄭 求宗
     (韓日文化交流会議委員長、東西大学碩座教授)
    委員 :孔 魯明
     (元駐日大使、元外交通商部長官)
    :權 丙鉉
     (韓中文化青少年協会会長、「未来の森」代表、元駐中大使)
    :李 元泰
     (韓中友好協会副会長 、錦湖アシアナグループ副会長)
    事務局 :李 康民
     (韓日文化交流会議事務局長、漢陽大学教授)
    :文 閏貞
     (韓日文化交流会議事務局職員)
    専門家 :李 培鎔
     (文化財庁世界遺産文科委員長、前梨花女子大学学長、前韓国
     学中央研究院長)
    芸術家 :李 採吾
     (東国大学仏教美術文化財造形研究所研究員)
    :金 正勳
     (         〃         )
    [中国]
    委員長 :李 希奎
     (中国人民対外友好協会秘書長、中国友好平和発展基金会
     理事長)
    委員 :程 海波
     (中日友好協会副秘書長)
    :唐 瑞敏
     (中国人民対外友好協会アジア・アフリカ部副主任)
    事務局 :洪  磊
     (中国人民対外友好協会アジア・アフリカ部副処長)
    :周 笑丹
     (          〃         職員)
    :李 博寰
     (中日友好協会政治交流部職員)
    専門家 :王  昕
     (北京冬季オリンピック組織委員会総括企画部総合処副処長)
    芸術家 :曾 軍藝
     (中国水墨学会常務副会長)
    :張 忟月
     (中国美術家協会会員)
     (注)忄文は、りっしんべんに文の一文字
  • 5. 討論内容
    (1)各国委員長発言要旨

    [韓国・鄭求宗委員長]

    この度は、2018年平昌冬季オリンピック、2020年東京夏季オリンピック、2022年北京冬季オリンピックと史上初めて東アジアの三カ国で続けてオリンピックが開催される。これを契機に人的交流をより活発化させ、三カ国の関係をより確固なものとしたい。当フォーラムはこれまで13年続いてきたがその間一回も中断することなく、毎年、多様なテーマを掲げ、話し合いを続けてきている。三カ国の文化のルーツには共通点が多く、今日も共有している。すなわち、漢字、米、箸の文化である。また、これまでのフォーラムでは、様々な共通の伝統文化が持続的な交流の下、三カ国で分かち合われてきたことを確認できた。今後も、三カ国の交流が世界の文化交流、人的交流に寄与することを願う。

    [中国・李希奎委員長]

    中韓日の友好強化は、三カ国国民の願いである。今回のフォーラムは、北東アジアにおける平和の安定に大きな意味を持つことになろう。歴史を直視するとともに未来志向で関係を持つことが重要である。フォーラムで実現した三カ国共通の歌「わたしは未来」を担う子供たちが将来の三カ国の協力発展に大きな役割を担うだろう。

    [日本・宮廻正明委員長]

    フォーラムの創設者のひとりである故平山郁夫先生は、広島で被爆されており、そうした体験から、文化による世界平和への貢献、文化による社会貢献というご自身の理念を、常に唱えておられた。文化による東アジアの繁栄と安定を願うフォーラムの精神の根底に、こうした平山先生の精神が流れていることを大変嬉しく思う。
    今回のテーマは「韓中日オリンピックと東アジアの文化芸術交流」だ。オリンピックに関しては、三カ国は夏季および冬季大会を共に持つわけであり、オリンピック開催という点では三カ国は共通の土俵を持った。
    近代オリンピックの源流は、古代ギリシャにおけるオリュンピア大祭、オリュンピア祭典競技に遡ることができる。この祭典の期間はギリシャ国内における争いごとは全て止められたと伝えられている。一方、21世紀の今日では世界において戦火が絶えることが無い。最も近いオリンピックは明年の平昌冬季大会だが、どうかこの期間だけでも、人々の心から争いは取り除いて欲しいと願っている。
    ところで、本日、日中韓の三カ国の前途有望な次世代をになう画家によるオリンピックをテーマにした作品が公表される。三カ国、6人の画家が描いた作品は、平昌オリンピック組織委員会に寄贈された後、オリンピック開催期間中に公開されるとのこと。2013年の新潟市・佐渡市で発表された「わたしは未来」は、今や日中韓文化交流フォーラムにおけるテーマソングになった感がする。このたび、平昌冬季オリンピックを記念して描かれる絵画作品が韓国の地で未来永劫に保管されることは「わたしは未来」に続くこのフォーラムが生んだ大きな成果であると信じる。

  • (2)各国専門家発言要旨

    [韓国・李培鎔氏]

    自身の仕事は、韓国文化を世界化することである。文化を糸口にすれば、利害関係を超えて、信頼と寛容の精神を持って、相互に尊重し合うことができる。「韓流」は世界に拡散し、韓国文化を伝える大きな役割を果たした。韓国ドラマは、西アジア、中東、東南アジアに広がった。Kポップは、韓国文化のメッセンジャーだ。新たな「韓流」3.0では、韓国の伝統文化を更に活用し、世界に感動を与 え、新たな想像の力が創出されるように寄与したい。
    平昌オリンピックは、文化オリンピックにならなければと主張してきた。それにより、国家ブランドを高めることができる。オリンピック会場の紹介とともに地元観光スポットの紹介を行なうことにより、オリンピックの文化面での役割を促進したい。また、韓国の伝統的住宅「韓屋(ハンオク)」 を新しく造ろうという活動を行っている。オリンピック・パラリンピック会場の近くに三軒建てた。
    これにより相互の文化を理解しあうことができる。メダルを取れなかった選手を励まそうという運動も行っている。「寛容の文化」を世界に発信したい。分断の象徴である「非武装地帯」は平和の出発点になりえる。オリンピック施設は、オリンピック終了後も持続的に活用されなければならない。 相互交流には「笑顔と親切」が重要。文化の分かち合いが、相互信頼のきっかけになればと思う。

    [中国・王昕氏]

    2022年冬季北京オリンピック・パラリンピックでは、開放的でクリーンな大会を目指す。そのため、重点事項を9つ設定した。
    ①効率的な組織構造の設定
    ②明確なビジョンの設定
     夏と冬のオリンピックを同一都市で開催するのは、北京が初めてであり、非凡で卓越したオリンピックにする。環境に優しく、腐敗の無いクリーンで、開放感のある大会を社会の現代化の起爆剤とする。
    ③オリンピック施設
     北京の他に二カ所で競技施設を設ける。
    ④公式スポンサーを募る
    ⑤大会エンブレムのデザインの公募
     14か国から4,000件以上の応募を集めた。
    ⑥専門家の採用および育成
     27人の外国人を採用し、81名の専門家を日本、韓国のオリンピック組織委員会に派遣した。
    ⑦広報と参加
     広州で開催された2016年の20ヵ国グループ首脳会合(G20)でオリンピックを広報。
     小中学生を対象とした冬季運動会の実施。
    ⑧国際協力
     東京オリンピック組織委員会との間で人的交流を推進。
    ⑨持続可能性
     競技場の再利用を推進。具体的には、製鉄会社を移転し、外殻は残したままオリンピックのための事務所や競技場、あるいは練習場に改装する。

    [日本・宮廻委員長]

    オリンピックでは、もともとオリンピックに組み入れられていた「文化」がいかに大切かを理解してもらうことが重要である。
    日本文化は、中国や韓国から伝えられた物であるが、その元には中国の更に西方からの文化も存在し、それらが西から東に隣村から隣村へと現地の文化と混じりあいかつそれぞれの文化の尊厳を保ちつつ時間をかけて伝播してきた。
    中国には3000年以上の歴史を有する敦煌の仏教遺跡がある。元東京藝術大学学長の故平山郁夫先生の働きかけで敦煌遺跡の修復が始まり、敦煌研究院の王旭東院長が東京藝術大学の招聘教授をされていたこともあり、敦煌をきっかけに、これまで日中間の心の繋がりを大切にしてきた。
    今後もそのような平山先生の活動、すなわち「心の交流」を継承していかなければならないと思っている。「心」が文化を共有できるのである。
    東京藝術大学では、特許を取得した技術により、実物そっくりに文化財を制作することができる。
    その技術によって作られた美術作品を「クローン文化財」と呼んでいる。これにより、非公開とされている文化財と変わらないものを広く公開することができるようになった。また、同技術により、過去の資料を基に、欠損部を復元することさえも可能となった。この技術があれば、戦争や自然で破壊された文化財であっても、それらを次世代に繋ぐことができる。実例では、法隆寺の焼失した壁画「釈迦三尊像」やタリバンに破壊されたバーミヤンの巨大磨崖仏の天井壁画を再現した。
    そのように伝統という財産を守り、新しい革新を加えていくことで文化の付加価値を次世代へと引き継いでいくことができる。
    オリンピックとともにこのような「文化」による精神性の復活が可能となる。

  • (3)自由発言(各国委員)

    ・日中韓の青年団を組織し、19年間砂漠緑化活動をしてきたが、大きな成果が上がっている。オリンピックに緑化運動を加えられればと思う。

    ・平昌オリンピック・パラリンピックの成功は、東京、北京オリンピック・パラリンピックの成功に繋がる。これを契機に、三カ国の青少年の交流を深めるためのプロジェクトを推進することが重要である。

    ・文化および人的交流という絆は、三カ国共通の利益になるということは歴史が証明している。時には政治環境が厳しい状況に陥ることがあるが、それでも、文化面での繋がりは継続しており、現在、「twice」という女性のKポップスグループが活躍しているが、その中の三人は、日本人である。

    ・このフォーラムのために作られた曲「わたしは未来」の作詞をされた夢枕獏先生が中国人の監督とともに制作した映画が12月に中国で上映される。作曲をされた東京藝術大学の松下功先生とともに感謝をしている。故平山郁夫先生は、中韓およびアジアと日本との交流に大変尽力をされた。日中韓での文化交流活動をしっかりと活用することにより、政治関係を改善していければと思う。

    ・日中韓三カ国は、近隣がゆえに政治・経済の面でぶつかることも多いが、このフォーラムが13年間一度も滞りなく継続してきたことは素晴らしいことである。オリンピックは、スポーツだけではなく文化・芸術の祭典である。スポーツには勝負があるが、文化・芸術ではいっしょに手を携えることができる。今後も、末永く当フォーラムが続いていくことを望む。

    ・「わたしは未来」が、韓国・中国の地で永遠に残るのは大いに意義がある。今後、フォーラムではさらに、何をするのかが重要であり課題である。「継続は力なり」。次の世代に引き継いでいくことが必要である。

  • 6.文化交流イベント

    「韓中日次世代美術交流ワークショップ」

    日中韓三カ国の若手芸術家によるオリンピックをテーマにした絵画の制作

    日本 :鷹濱春奈、松原亜実
     (ともに東京藝術大学社会連携センター勤務・日本画家)
    韓国 :李採吾、金正勳
     (ともに東国大学仏教美術文化財造形研究所研究員)
    中国 :曾軍藝
     (中国水墨学会常務副会長)
     張忄文月
     (中国美術家協会会員)
    ※完成作品は韓国に寄贈され、平昌オリンピック・パラリンピック会場にて展示・公開された後、同国内で活用される。
    :江陵シーマークホテル 別館2F「湖ホール」
    日時 :11月2日(木)午後2時00分~4時30分

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