[活動紹介] 事例紹介

第十五回「日中韓文化交流フォーラム」
<実施期間:2019年11月13日(水)~15日(金)>

  • 1. 全体会議
    2019年11月14日(木)
  • 2. 会場
    日本・東京都 東京ドームホテル・東京藝術大学
  • 3. テーマ
    「音楽~アジアをつなぐ弦の響き」
  • 4. 出席者
    [日本]
    委員長 :宮廻 正明
     (文化財保護・芸術研究助成財団理事長)
    委 員 :青柳 正規
     (文化財保護・芸術研究助成財団副理事長、前文化庁長官)
    :澤  和樹
     (東京藝術大学学長)
    :小宮  浩
     (文化財保護・芸術研究助成財団専務理事)
    :門司 健次郎
     (元カナダ大使、元ユネスコ大使)
    :塚原 康子
     (東京藝術大学音楽学部教授)
    専門家 :萩岡 松韻
     (東京藝術大学音楽学部教授)
    事務局 :丸山 純一
     (文化財保護・芸術研究助成財団事務局長)
    [中国]
    委員長 :李 小林(LI XIAOLIN)
     (中国人民対外友好協会会長)
    委 員 :袁 敏道 (YUAN MINDAO)
     (中日友好協会秘書長)
    :張 昇君(ZHANG SHENGJUN)
     (李小林会長秘書)
    :潘  林 (PAN LIN)
     (中日友好協会友好交流部副部長)
    :洪  磊 (HONG LEI)
     (中国人民対外友好協会東アジア部三処副処長)
    :李 博寰 (LI BOHUAN)
     (中日友好協会政治交流部職員、通訳)
    専門家 :楊  青 (YANG QING)
     (古琴専門家(演奏家)、中国琴会副会長)
    :梁  雅 (LIANG YA)
     (琴歌唱頌者)
    [韓国]
    委員長 :鄭 求宗(CHUNG KU CHONG)
     (韓日文化交流会議委員長、東西大学碩座教授)
    委 員 :孔 魯明 (GONG RO MYUNG)
     (前駐日大使、前外務部長官)
    :權 丙鉉(KWON BYONG HYON)
     (韓中文化青少年協会会長、「未来森」代表、前駐中大使)
    :李 康民(YI KANG MIN)
     (韓日文化交流会議事務局長、漢陽大学教授)
    :徐 鉉宰(SUH HYEON JAI)
     (韓中友好協会事務局長、錦湖アシアナ文化財団専務)
    専門家 :閔 義植(MIN EUI SIK)
     (韓国芸術総合学校教授(伝統芸術院音楽科カヤグム専攻))
    :閔 栄治(MIN YOUNG CHI)
     (チャング演奏家、新韓楽代表)
    事務局 :文 閏貞(MOON YOON JEONG)
     (日文化交流会議事務局職員)
  • 5. 討論内容
    (1)各国委員長代表発言要旨

    [日本・宮廻正明委員長]

    過去14回、様々なテーマを提起し論じ合ってきたが、今回は初めて音楽にテーマを求め、弦楽器にスポットを当てて日中韓三カ国の専門家に講演と演奏をお願いする。
    テーマである『アジアを結ぶ弦の響き』の中には、日・中・韓の永遠の友情と連帯の心を確認し、三カ国が中心となって東アジアの平和と安定に寄与し、それが世界平和に貢献する力となることを願う心がこめられている。この精神は、本フォーラムの創設理念に基づくものでもある。
    日本は「筝(そう)」を取り上げる。「筝」は奈良時代に「唐」から伝わったものである。中国から伝えられた琴、すなわち筝は、日本に入り、改良の手が加えられ独特の進化・発展を遂げた。今日では邦楽の重要な一分野を担っており、筝の一本の弦を通じて、大陸文化との結びつきを強く感じる。
    中国は「古琴(こきん)」を取り上げるそうである。1977年に打ち上げられたアメリカの宇宙探査機ボイジャーには、宇宙の知的生命体との遭遇を想定して、地球の文化・文明を紹介する情報を収録した一枚のゴールデンレコードが搭載されているが、その中に画家であり、古琴の名手でもある管平湖による古琴の名曲『流水(りゅうすい)』の演奏が納められているとのこと。また、古琴の演奏技は2009年にユネスコの無形文化遺産に登録されている。
    日本の文化の源流をたどると、その多くは、はるか遠くはシルクロードから中国、韓半島を経由して伝えられたものである。今回、韓国は、「伽耶琴(カヤグム)」を取り上げるそうである。カヤグムは、日本にも奈良時代に新羅から伝わり、新羅琴と呼ばれて平安時代まで貴族の間で演奏されていたと伝えられている。
    『音楽-アジアを結ぶ弦の響き』というテーマで日・中・韓の琴が揃ったが、形、形態は似て非なるものと言える。楽器のジャンルは撥弦楽器に属するものの「筝」も「古琴」も「カヤグム」も、その進化・発展は独自の創意工夫のもと歩んできた。そうした歴史的な成果を本日、東京藝術大学COIホールで耳にすることが出来ることを、私は期待すると共に嬉しく思う。
    三カ国の弦楽器-一般に日本では琴と称される楽器の似て非なることこそ文化の多様性であり、文化の魅力であると信じる。

    [中国・李小林委員長]

    藝大元学長、文化財保護・芸術研究助成財団元理事長の平山郁夫氏の提唱で始まった当フォーラムは、第1回韓国ソウルで開催して以来、今年で15回目の開催である。その間、政治的関係などで波もあったが、一度も中止することなく今日に至っている。
    今回のテーマは『音楽-アジアを結ぶ弦の響き』である。音楽は人々の心を動かせる芸術であり、人類の共通言語でもあり、日中韓三カ国の長い歴史の中で国や言葉を超越した共通の言語である。音楽は、各国が築いてきた歴史に関する考えやこれまで作り上げてきた文化を海のように深く評価してくれる。また、音楽は川のように流れ、逆行せずに未来に向かって流れていくものである。
    三カ国は、文化だけでなく地理的にも近く、切っても切れない関係であり、平和や繁栄に関する共通の願いもある。
    今年5月北京において「アジア文明対話大会」が開催され、アジアの国々から四十七カ国が参加した。会議の場で、習近平国家主席が「世界はグローバル化し、社会の多様化が進んでおり、希望に満ちた社会を構築するには一層の相互交流・相互学習が必要」と講演し、三カ国も文化交流を始め様々な協力強化が望まれる。
    私は当フォーラムにおいて3つの提言をしたい。
    ①三カ国の文化交流を通して東アジア地域だけでなく世界の平和と安定に積極的な役割を果たす。
     世界の国々は変革期を迎えており、三カ国は密接に協力し様々な問題に立ち向かっていく必要がある。特に文化・芸術は大きな影響力があり、文化をもって人々の心を結びつけ、東アジア及び世界の平和と安定に寄与していく必要がある。
    ②開かれた気持ちを持って東アジアの文化交流にイノベーションを生み出し文化交流を推進する。
     自国の文化に触れるだけでなく、他国の文化に積極的に接する機会を提供し、各国の国民の密な交流を実現する。
    ③青少年の交流等、人的交流を強化する。
     当フォーラムは、会歌「わたしは未来」を継続的に歌ってきた。三カ国の青少年は、東アジアの未来だけでなく世界の平和・発展の希望でもあり、世界の平和・発展を推進する力にしたい。

    当フォーラムは、14年間開催されてきたが、未だに活力あふれるフォーラムである。これは文化・芸術の魅力だけではなく、代表機関及び在席の方々の力の賜である。初心を忘れず、本フォーラムの創設理念に基づき文化交流を推進することにより、東アジア及び世界の平和と発展に寄与できるものと確信している。

    [韓国・鄭求宗委員長]

    当フォーラムは、14年間一度も途切れることなく開催されてきた。また、文化交流活動を通して各国国民の友好関係を深めることにも貢献してきた。
    日中韓三カ国は、数千年に及ぶ交流の中で文化的文物が往来する歴史を記録し、文化的な環境・伝統を共有する東アジアの独特な文化圏を形成してきた。
    私が代表を務める韓日文化交流会議が主催する韓日両国の伝統の声と音楽、舞踊の公演「第8回 韓日文化交流公演『同行』」が10月4日大阪市で公演し、また翌日には奈良県桜井市の土舞台において記念公演を行った。
    関西地方は、三カ国の文化交流が千年以上前から続いてきた歴史があり、両市において歴史の現場を訪問した。大阪は、古代からも韓日文化交流の足跡が多く残されている関西の中心地である。桜井市の日本最初の国立劇場と言われる土舞台は、三カ国の文化交流を千年以上前から見守ってきた歴史の舞台である。
    文化交流の歴史は各地に残っており、これは正しく東アジアの文化遺産であり共有しているものである。三カ国は、文化的同質性とこれまで築いてきた伝統を活かしながら、アジア太平洋地域はもとより世界に誇る東アジアの文化の中心国であることを確認し、その役割を果たしていくことを当フォーラムとして期待する。
    次回2020年の開催国は韓国であり、10月頃、仁川(インチョン)市を予定している。

    各国委員長挨拶

  • (2)各国専門家講演要旨

    [日本・萩岡 松韻氏(東京藝術大学音楽学部 教授)]

    テーマ「シルクロードがもたらした響き」

    ○「箏」と「琴」について
     「こと」は大和言葉で、「弦楽器」を意味する言葉。

    • ・箏 音読「ソウ」訓読「こと」 ・琴 音読「キン」訓読「こと」
      箏も琴も、どちらも奈良時代が始まる頃に中国から伝来した楽器で、楽器と共に漢字も伝来した。「箏」「琴」それぞれ構造の異なる別種の楽器をさす。

    ○日本の「こと」(琴箏類 ツィター属)について
     弥生時代後期 登呂遺跡、古墳時代中期 服部遺跡で出土例あり。

    • ・和琴・・・・日本で生まれた楽器。弥生・古墳時代の出土楽器がルーツ。神事用の神聖な楽器として意識されてきた。「やまとごと」とも言う。
    • ・琴・・・・・・奈良時代が始まる頃に中国より伝来。平安時代に廃れる。江戸時代に儒学者などの文人の楽器として再興。
      弦は7本。徽(き)を左手で押さえ、右手の指で撥弦。
    • ・箏・・・・・・奈良時代が始まる頃、中国より雅楽の楽器の一つとし伝来。貴族社会の中で楽しまれた。楽箏をルーツとして、中世から近世の箏曲に使う箏が誕生。
      弦は13本。演奏前に各弦の音高を箏柱で決定。主に右手の爪で撥弦。

    ○「箏曲」の誕生へ

    • ・賢順(1534~1623? 1547~1636?生没年は諸説あり)
      室町時代の末期に、現代につながる箏曲〈箏の音楽〉の基礎を築いた
    • ・八橋検校(1614~85)
      近世箏曲を創始した八橋検校は、平家琵琶を伝える盲人音楽家で、三味線の演奏家でもあった。その八橋検校が箏を学んだのが、江戸で箏糸商を営んでいた賢順門下の法水であったと伝えられている。一説には正当なる筑紫箏の伝承者の玄恕にも学んだと伝えられている。八橋検校はその後、慶安年間(1648~52)に筑紫箏に改革を加えて、その歌詞や旋律を活用した箏の組歌、≪六段調≫などの段物を作曲し、近世箏曲を樹立した。
    • ・箏曲(箏の音楽)の誕生
      箏は、本来、貴族が楽しむ楽器。
      [平安時代]雅楽の合奏楽器の一つとして使われた。独奏楽器として使われることもあった。
      ⇒様々な階級の人に演奏されるようになり、箏のための音楽(箏曲)が誕生。
      [室町時代~]僧侶や武士が楽しむ。
      [江戸時代~]庶民も楽しむ。当時の箏曲の専門家は当道座に属する盲人。
      「当道座」とは・・・「平家」(『平家物語』を琵琶の伴奏で語る音楽)を職業とする盲人の琵琶法師が南北朝時代に結成した芸能集団。江戸時代には、平家に加え、地歌、箏曲、胡弓楽も専業とした。

    ○箏曲の流派の代表について

    • ・生田流:八橋検校の孫弟子である生田検校(1656~1715)の名を付した流派。
    • ・山田流:山田検校(1757~1817)が創始した流派。江戸を中心に広く愛された。

    ○箏を楽しむ人々の広がり

    • 奈良時代~貴族
    • 室町時代~僧侶、武家
    • 江戸時代~盲人音楽家、庶民にも広がる
    • 現代~世界中の人々に

    [中国・楊 青氏(古琴専門家(演奏家)、中国琴会副会長)]

    テーマ「東アジア文化に対する孔子古琴楽教の影響」

    ・古琴は、はじめは5本の弦であったが、周の時代に7本の弦が確立され、「七弦琴」とも呼ばれるようになった。
    ・歴史書によると、古琴は少なくとも4000年の歴史をもつ。
    ・孔子は古琴を用いて音楽教育を行い、春秋時代では文人の必修楽器であった。その文人は、左手に琴、右手に書物がおいてあったと言われている。
    ・2003年、中国の古琴芸術はユネスコの世界無形遺産に登録された。
    ・奈良国立博物館で開催された「第71回正倉院展」のチラシの表紙に掲載されているのは「金銀平文琴」という中国の古琴である。
    ・「金銀平文琴」は、金や銀の薄板を文様に切り、漆を塗り表面を研ぎ出す平文という技法で飾られている。唐の時代に制作されたと考えられている。
    ・「金銀平文琴」は、縦にすると人間の形のような形状をしており、これは孔子が発明したもの。
    ・孔子は、音楽は社会的、政治的に大きな力をもっていると主張し、音楽教育を体系的に形成した。
    ・「和」は、人と人、国と国、人と自然の調和の取れた形であり、孔子の思想の基準となっている。
    ・音楽教育を実施するには、多くの人、楽器、衣装、会場等様々な準備が必要であり授業を行うには大変なことであった。そこで孔子は、重さも軽く持運びがしやすい古琴を用い、教壇で古琴を弾きながら「楽」について教えた。非常に生き生きとした授業であった。
    ・孔子の思想は東アジアにも強い影響を与えている。紀元285年百済の学者王仁が「論語」10巻、「千字文」1巻を持ち帰り、後に日本に伝えた。これが儒教伝来の初めと言われている。
    ・孔子の思想及び実践する古琴音楽は東アジアの文化へ大きく影響を与えている。
    ・唐の時代日本から19回遣唐使が派遣され、その間、大量の古琴音楽が日本に入ってきた。また、音楽の管理制度も伝えられ、雅楽の発展にも影響した。
    ・明王朝末期に古琴(7弦琴)が日本に伝えられ、現存するものは東京国立博物館に収蔵されている。
    ・韓国には「玄琴」という長い歴史を持つ楽器があり、古代中国から伝わった。玄琴は韓国を代表する文人楽器であり、韓国の伝統文化において重要視されている。
    ・玄琴は、中国の古琴の7弦とは違い6弦である。また、音は男性の声や女性の声に似た音を奏でることができるなど、様々な音を出すことができる。
    ・中日韓三カ国は、地理的にも近く文化の共通点も多く歴史的にも関係が深い。これからもお互いを理解し合い、歴史をともに語り、よりよい未来を創造するために協力していきたい。

    [韓国・閔 義植氏(チャング演奏家(伴奏)、新韓楽代表)]

    テーマ「カヤグムの歴史と変遷」
    ・カヤグムの構造について
    日本の正倉院には、年代が819年と表示されている新羅琴が比較的良い状態で保存されている。カヤグムの外観は羊耳頭を持ち、胴体は桐の幹をくり抜いて作ってあり、その上に12弦の絹糸が張られている。弦は雁足の上に音の高さの順に載せられている。
    ・カヤグムの起源と歴史
    カヤグムは、韓国の最も代表的な弦楽器(撥弦楽器)である。楽器の分類上、シタール類の楽器である。カヤグムは楽器の名前からその起源を知ることができる。古代国家である「伽倻」の「琴」という意味であり、6世紀に伽倻国で誕生し新羅で演奏されていたという記録が中国の歴史書である「三国志」等に記載されている。
    ・カヤグムの種類について
    12弦、15弦、18弦、21弦、25弦などのカヤグムがあり、また、高音、低音カヤグムや、電子カヤグムなどあり、時代とその音楽に合わせ常に変化してきた。
    ・カヤグムの演奏法について
    カヤグムは、伝統的に床にあぐらをかいて、楽器の頭の部分を膝の上に置いて演奏する。近年では舞台の状況に合わせて椅子に座って演奏することもある。主に右手の親指から中指を使って音を出すが、現代音楽では右手のすべての指を使って演奏する場合もある。代表的な演奏法は、すくう、弾く、つまむがある。左手の演奏法は、弦を押したり、引いたり、弦を揺らす独特の演奏法、ビブラートによって、様々な音色を作り出す。1960年代以降、カヤグム創作曲が多く作曲されて新しい演奏法が開発されている。

    今回紹介された日中韓三カ国の弦楽器は、形、大きさは違うが、同じアジアの兄弟のような楽器であり、アジアの音楽の発展に貢献する代表的な弦楽器になること、また、三カ国の弦楽器のアンサンブルができること、世界に愛される弦楽器になることを祈願する。

  • (3)各国委員自由討議

    [日本側委員]

    ・人々は日中韓三カ国の古典楽器、日本で言えば和の楽器に興味を持たないことが多く、例えば、世界遺産のある場所に楽器博物館等を建設する等、和の楽器の良さが自然とわかるような策が必要。また、TVコマーシャル、駅の発車メロディー等に和の楽器を使った音楽を流し、興味のない人にも聞いてもらい和の楽器の良さを知ってもらうことも必要。
    ・三カ国の楽器の部分に共通な名前、龍、雁があることわかり感銘を受けた。
    ・「カヤグム」と日本の「琴」には共通することが多く、互いに古典を大切にし、現代音楽では弦を増やす等、改良に取り組んでいる。ただし、日本では電気琴はできていない。
    ・楽器そのものは中国・韓国から伝わってきたものだが、流派、曲等は日本独自に作られてきた。特に江戸時代には、視覚障害を持った音楽家の人に特別の権利を与えて作曲・演奏をさせてきた歴史がある。明治以降は障害を持たない人や女性の奏者も増え、盛んになっている。

    [中国側委員]

    ・古典音楽にしても民族音楽にしても少人数の中で行っていることが多く、大衆の中に浸透しているかというと、そうは言い切れない。中日の間では古典音楽の交流、演奏会の開催等も多く行っている。
    ・今回のテーマである弦楽器は中国から韓国、日本に伝わりそれぞれの国で発展を遂げたことが理解できた。逆に現代は日本や韓国からいろいろな音楽が中国に入ってきて中国に大きな影響を与えている。
    ・音楽は人々が融和し交流を深めることができ、特に今回のフォーラムの音楽を通しての交流は、友情の歴史を語り合い、各国の友情・理解を深めることができた。

    [韓国側委員]

    ・地球規模の自然破壊が進んでおり、人類が危機に瀕していることを悟らなければならない。かつて東方文明は人類を導く文明であった。我々は初心に帰り新たな価値観を見いださねばならない。隣人と仲良くするには相手を批判するのではなく、お互いを理解し合い、ともに生きる方法を見つけていかなければならない。音楽は病気をも治す力を持っていると言われている。音楽を利用し隣人と仲良くすることもできるであろう。

  • (4)閉会の言葉

    各国の専門家の意見を聞いて、三カ国の文化の根底にあるものは孔子の儒教であることが確認できた。
    西洋の音楽は、リズム、ハーモニー、旋律を組み合わせた数学的な構成がギリシャ・ローマの時代から作られてきた。現代西洋音楽とは断絶しているが、今でもリズム、ハーモニー、旋律を組み合わせることによって作られている。
    ところが、3人の専門家から説明された音楽は、西洋音楽と全く体系の違う人格形成のための教養であることがわかる。東アジアの音楽というものを世界に発信し、世界の文化の多様性を証明する必要がある。
    第2次世界対戦後、世界で奇跡とも言われる経済発展を遂げてきた東アジアの国々は、中国の言葉で「衣食足りて礼節を知る」とあるが、今こそ礼節、すなわち文化を大切にし、お互いの文化を尊敬し合うことが大切である。
    専門家の講演では、三カ国の音楽の違い、共通性を理解できた。この3つの音楽がオーケストレーションすることによって大きな交響曲ができるような文化にしたい。可能性はこのフォーラムで実証された。

  • (5)まとめ

    音楽が山高く、広大な裾野を持つ芸術の分野であることは明白である。
    本日の討議の「琴」という楽器を取りあげても、実に多様な顔を持っていることが分かった。その意味でも本日の討議だけで、音楽に関する一つの結論を出すのは誠に無理な話であると言わざるを得ない。
    今回を契機にこのテーマについては、継続審議として今後、様々な角度からもっと論じることとしたい。

    各国専門家による講演

    活発な自由討議が行われた

  • 6.文化交流イベント
    • (1)日中韓各国語で歌う日中韓文化交流フォーラム会歌「わたしは未来」披露
      合唱:東京藝術大学の中国・韓国からの留学生、芸大生
      会場:東京ドームホテル「シンシア」
      日時:11月13日(水) 18時05分
    • (2)演奏会
      会場:東京藝術大学 Arts & Science LAB. 4F「COIホール」
      日時:11月14日(木) 13時30分 ~ 15時30分
      内容:
      [日本]
      演 奏  曲名「秋篠寺(あきしのでら)」
           作歌:堀内 瑞善  作曲:中田 博之
           唄:萩岡 松韻
           箏:上條 妙子   尺八:青木 鈴慕
      奈良の古刹、秋篠寺前住職 堀内瑞善の作歌六首を現代の組歌曲に構成したもので、各歌の心を六十四拍の形式にそれぞれあてはめてある。
      秋篠寺は奈良市の郊外の林の中にひっそりとたたずむ静かな寺。この寺には芸能をつかさどる伎芸天の美しい像があり、この曲はそうした秋篠寺の四季のたたずまいをうたっている。
      序では、歌の一部の変化音も含めて全体として都節音階による伝統的な旋律だが、箏と尺八のパートの動きには洋楽の影響が見られる。春と夏の部分では、前奏や間奏で用いられる和声的な響きを別にすれば、この曲の中で最も古典的なスタイルで書かれており、秋から後では、箏は前半と同じ平調子に調弦され、都節音階によるが、旋律法に洋楽風な動きが加味されている。また民謡音階の中の中間音の使用や、短調の響きを漂わせるような分散和音的な音の動きもしばしば現れている。

      [中国]
      演 奏  曲名「流水(りゅうすい)~酒狂(しゅきょう)~蒹葭(けんか)」
           古琴:楊 青  琴歌唱頌歌:梁 雅
      「流水」は古琴の名曲として、数千年にわたり弾き継がれてきた。知己を意味する「知音」という言葉は正に、中国古代における古琴の名手・伯牙とその親友・鐘子期が古琴曲「高山流水」を通じて知己となった故事に由来している。
      「酒狂」は一説では中国魏・晋の時代の「竹林七賢」の一人である阮籍の作品だと言われているが、後に考証を経て唐の時代の作品である可能性が高いとされている。愉快で瀟洒な旋律で、古代の文人たちが酒を楽しみながら詩歌を詠む際の悦びの気持ちを表現している。
      「詩経」に収録されている琴歌「蒹葭」は、湖に生える葦の美しさに対する描写と賛美を通じて、水の女神への愛慕と思い焦がれる気持ちを描いたものである。

      [韓国]
      演 奏  曲名「沈香舞」
           作曲:黃秉冀
           伽耶琴:閔 義植  伴奏(チャング):閔 栄治
      「沈香舞」は仏教音楽の梵唄の音階を基に、東洋と西洋の共同的な原始情緒を表現した作品。

    • 日本の演奏


      中国の演奏

      韓国の演奏

    • [特別演奏]
      東京藝術大学 澤 和樹学長による弦楽五重奏
      演 奏  曲名 ヴィヴァルディ「四季」より「秋」
       〈弦楽五重奏と箏〉
         Vn.:澤 和樹    箏:上條 妙子
         Vn.:岸本 萌乃加  Vn.:堀 真亜菜  Vla.:児仁井 かおり
         Vc.:安保 有乃   Cb.:タカモト 知弥
       〈映像上映〉
         アニメーション:和田 淳
         技術協力:東京藝術大学COI拠点 共感覚メディア研究グループ
      東京藝術大学とヤマハ株式会社は、生演奏の速度変化に合わせてアニメーションが動く、世界初のAI映像同期上映システムを共同開発した。
      その技術を用い、ヴィヴァルディの「四季」の音楽世界を東京藝術大学がアニメーション化し、澤学長と日米両学生の演奏によるライブアニメーションコンサートを2019年1月に米国ロサンゼルスで行った。
      この度の特別演奏では、その際に披露されたヴィヴァルディ「四季」より「秋」の演奏とアニメーションの同期上映を行った。
    • 澤和樹学長による特別演奏

    • (3)東京藝術大学視察

      左:Arts & Science LAB. 中央:日本画 右:文化財保存修復 彫刻

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